昔、受験勉強の一環で「遊びについて」という小論文を書いたことがある。芸術はいつも遊び心から生まれる、とかなんとか書いたように思うのだけど、たいした人生経験のない高校生が机の上でひねり出した言葉に重みはなかった。それでも今そんなことを思い出したのは最近、幼児教育という新しい分野の仕事をしているからだ。遊びながら聴覚を発達させていろいろな感覚を目覚めさせる、想像力を養う、・・・といろいろ目的があるらしいけど、私の願うところはただひとつ。注意深く耳を澄まして、ただただ音楽を好きになってほしい。形のないあやふやなものに取り憑かれるのも悪くない。目に見えなくてもひとつのことにじっくり取り組むと、それが糧になって自分を支えてくれることがある。それは他人(論文だと他者、というところ)に手を差し伸べられたのではどうしてもダメで、自分の内側からだけ湧き出てくるものだ。単に結果や目的ではなく、音楽がずっとその人の人生に寄り添って助けになるといい。そのスタートをいいものにしたい。
写真の絵は参加型音楽劇「ねことねずみ」、プロコフィエフ[ピーターと狼」、サンサーンス「動物の謝肉祭」