2008年1月11日金曜日


もうずっと前から活字中毒である。たぶん字が読めるようになってからすぐに。ひとりっ子だったからかもしれない。空想癖が強すぎてちょっと周りが心配するような子供だった。今もいつも2冊か3冊並行して読んでいる。だからうちには、たとえばお茶を飲みながら、お風呂に入りながら、寝る前に、とあちこちに栞のはさんだ本が置いてある。私にとって読書は旅だ。ページをめくるといろいろな世界に旅立てる。それは知らない土地だったり、別の時代だったり、あるいは誰かの心の中だったりして、こんなに興奮することはない。そしてなによりいいのは「いつでも帰ってこれる」ということ。たとえば映画は途中で止めるのがむずかしい。テレビだって別にスイッチを切ってしまえばいいのだけれど、あの強烈な受身の姿勢をさっと現実に引き戻すにはちょっと力がいる。もちろん読み出したら止まらない推理小説などもあるけど、よし、ここまで、と本をぱたんと閉じる時が私は好きだ。そしてその時少し心が鎮まっていたり、勇気がむくむくと湧いていたり、違う自分になっているのを感じることもある。大学で美学の時間に「感動するということは、それを知る前と後では自分の中で何かが変わっているということです」と言った先生がいて、私はそれこそ、その言葉に感動してしまった。音楽もそうだ。演奏をしていて時々すうっと旅立てることがあり、聴いてくれる人も、それぞれどこかに旅立ってくれるといいなあと思う。何かを知る前と後で内側に変化がおこるということ、それはやっぱり旅じゃないか。だから人は旅立つんじゃないか。最近寝る前に読んでいるのは「図書館司書」というフランスの子供向けの本で、ますます遠くに行けるようにノートに訳をつけている。