2008年4月28日月曜日

私にはそう見えた



先日トゥルーズから帰る列車の中で、
日本人のおじさんと知り合った。
例のごとく列車は遅れていて、
お互いにひとり旅だったので
自然と話を交わすことになった。
おじさんは日本からの旅行者、
行き当たりばったりに宿をとって
気ままに旅を楽しんでいるのだそうだ。
ずいぶん前に息子さんと奥さんを亡くして
人生に対する考え方ががらっと
変わったということ、
リタイアした後に資格をとって
新しい生きがいを見つけたこと、など
ぽつりぽつりと語る言葉には重みがあった。
列車がようやくマルセイユに着くと、
おじさんはさっと立ち上がって「おかげで楽しかったです」と
名も名乗らずにお辞儀をして「あなたも異国で頑張ってください、でも
あまり頑張り過ぎないようにね」とにこっとした。
それは本当に、にこっという感じで
どちらかというとしょぼしょぼした普通のおじさんが
私には一瞬天使のように見えて、すぐに言葉がでなかった。
そしておじさんはスーツケースをカタカタいわせて
マルセイユの街中に小さく消えていった。